「遺言による寄付」をするためには遺言を書かなければなりません。どのように進めれば良いのか、まずは一般的な遺言作成の手順を見てみましょう。
財産と相続人を確認する
遺言を書き始める前に、調べておきたい重要なことが2つあります。
自分が所有する財産(相続財産)と、将来自分が亡くなったときに相続人となる人(推定相続人)です。
代表的な相続財産には次のようなものがあり、それぞれ書類を揃えておくと遺言書を書く際に便利です。
- 不動産 登記事項証明書、不動産権利証書等
- 預貯金 銀行やゆうちょ銀行などの通帳等
- 株式等 証券会社等からの取引残高報告書等
- 会員権 会員証、証書等
- 保険等 保険証書、お知らせ等
民法で定められた法定相続人と法定相続分は、次の表のとおり、順位があります。
現時点での推定相続人を調べるには、自分の本籍のある役所で戸籍謄本を取得し、そこから相続人を追ってさらに戸籍を取得することが必要です。
相続順位 | 法定相続人 | 法定相続分 |
---|---|---|
第1順位 | 配偶者、子(代襲者含む) | 配偶者1/2、子1/2 |
第2順位 | 配偶者、直系尊属(親) | 配偶者2/3、親1/3 |
第3順位 | 配偶者、兄弟姉妹 (代襲者は甥姪まで) |
配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
財産の配分を決める
相続財産と推定相続人が確認できたら、誰にどの財産を配分するか考えます。その配分には、財産を特定して配分する方法と、財産を割合で配分する方法、これらを併用する方法等があります。
遺言で寄付する場合も、相続人や相続人以外のお世話になった人との配分バランスが適正なのか、遺留分(後述)に配慮しているか、よく検討します。
また、現金以外の現物資産の場合は、受け取る人や団体との適合性にも配慮が必要です。
自筆の遺言か公正証書か
遺言書は方式が定められており、主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」が利用されています。
自筆証書遺言の要件は以下の4つです。
- 全文を自筆で記述する
- 特定可能な日付を記入する
- 氏名を記載する
- 印鑑を押捺する
自筆証書遺言は、簡単に無料で作成できる反面、様式不備による無効や紛失のリスク、相続発生後に家庭裁判所による検認(※)が必要などのデメリットもあります。
※検認とは、遺言書の保管者または遺言書を発見した相続人が家庭裁判所に申し立てる自筆証書遺言の形状および内容の確認・保全のための手続です。
一方、公正証書遺言は、公証人が作成する遺言ですので、様式不備や紛失リスクがなく、検認も不要。その代わり、作成費用が必要です。
遺贈寄付のある遺言を作成する場合、後日相続人との間で、遺言者の意思能力や遺贈寄付の意思解釈などを巡り争いにならないように、公正証書遺言で作成した方がより確実です。
遺言執行者を決める
遺言執行者とは、遺言に記載された通り相続手続き等を行い、遺言の内容を実現する人です。
遺言執行者がいない場合は、相続人全員で遺言に従った手続きしなければなりません。
遺言執行者は家庭裁判所に選任を申し立てすることもできますが、予め遺言書に指定しておくこともできますので、遺言書に書くのが簡単です。
相続人を遺言執行者に指定しておいても良いのですが、専門家に依頼して指定しておけば、公正な立場で正確迅速に手続きを行うので、相続人・受遺者間の対立や混乱を防ぎやすくなります。
信託銀行や信託会社などは、遺言信託という業務で、遺言執行者に指定することができます。
遺贈寄付する遺言
遺言が書ければ「遺言による寄付」は難しくありませんが、いくつか注意すべき点があります。
⇒ 基本的な遺贈寄付する遺言の注意ポイントをこちらからご覧ください。