実際にあった遺贈寄付のストーリー

大きな社会的問題から小さなまだ広く認識されていない身近な課題まで、皆さまの善意の資金がどのように活かされているのかご紹介いたします。
 
夫のやり残した想いを遺贈に託しストーリー1

夫のやり残した想いを遺贈に託し

主人と一緒にみた、女性に頭を摺り寄せる盲導犬の姿が目に浮かびました。香典を盲導犬訓練所に寄付として届けました。

「私の全財産を妻に相続させます」。カルチャーセンターで習ってきたと自筆の遺言書を渡された5年後に、主人は心不全で亡くなりました。享年79歳でした。
空しい気持ちで香典を数えていました。主人が亡くなった時、片方の目の瞳孔が開かなかったのは、何かやり残したことがあるのではと考えていました。ふと、主人と一緒にみた、女性に頭を摺り寄せる盲導犬の姿が目に浮かびました。香典を盲導犬訓練所に寄付として届けました。

 
主人のやり残したことは何か、いつも私の心にありました。児童養護施設に遺産を届けるという『おへそ曲がりの贈り物』という本に出会い、一晩、思い、考えました。
ポイントは何といっても「目」です。主人は戦地で罹ったマラリアの後遺症で左目がほとんど見えず、右目も相当の弱視でした。私も白内障の手術をし、そのことに悩んでいた主人の気持ちがよく分かり、私もずっと心を痛めていました。
遺言書をつくる前に、香典を寄付先となる盲導犬訓練所を訪ねることにしました。訓練しているところや施設を見せていただきました。利用者さんの「盲導犬が来てくれたおかげで、歩きながら風を感じることが叶った」、その言葉に感銘を受け心が決まりました。

 
ミャンマーの障がい児教育を革新した「遺贈」ストーリー2

ミャンマーの障がい児教育を革新した「遺贈」

アジアの最貧国のひとつミャンマーに、障がい児のためのスクール「NEW WORLD」を建設

「日本財団殿 私の預金等は世界の貧しい子供たちの為に使ってください。」と書きとめられた、手書きの自筆証書遺言書が残されている、という連絡が弁護士から入った。2012年の冬のことだ。
匿名を希望の女性Aさんからお預かりした遺贈は合計1億5千万円という非常に大きな額であった。日本財団はもともとNPOなど非営利団体の活動を支援する役割をもつ公益財団法人であるため、遺贈で「こんなことに活用して欲しい」という遺言書をあずかり、その希望を実現する役割をもっている。

 
しかしAさんには親族がおらず、遺贈の使い道を決めるヒントがあまりにも少なかったが、若いころは貧しく非常に苦労をされた方で、ある程度年齢を重ねてから士業となり、世界に貢献したいというお考えを持っていたことがわかった。

Aさんの想いを叶えるアイデアの検討がはじまった。最終的に、アジアの最貧国のひとつミャンマーに、障がい児のためのスクール「NEW WORLD」を建設することに決まった。ミャンマーでは、障がい児へのサポートはほとんど手付かずで、多くの障がい児は学ぶ機会も遊ぶ機会も限られ、また障がい児をサポートする人材もほとんど育っていないのが現状だ。

 
ヤンゴン市内に建設された6階建ての立派な建物が「NEW WORLD」。ここでは現在多くの障がいを持つ子どもたちが、それぞれのペースで学び、自立に向けた教育を受けている。また、全土から障がい児の教育者を受け入れ、特に対策が遅れている地方の人材育成を進めている。
日本のひとりの女性が遺した遺贈が、ミャンマーの障がい児教育を革新しようとしている。NEW WORLDの正面玄関には、「日本の匿名の女性の寄付により建設された」ことが記されており、日本とミャンマーの友好の架け橋ともなっている。

 
愛犬マリちゃんのメモ紙ストーリー3

愛犬マリちゃんのメモ紙

「マリプロジェクト」として遺志を活かしていくことを誓いました

連絡があったのは、2014年、都内のある自治体からでした。「○○区民の方が遺贈寄付先としてそちらを選らばれましたので、まずは手続き等ご説明したいので、ご来訪いただけますか?」の電話。その時点で、いただいた情報を元に、心当たりを思い出してみるのですが、会員にも、過去の寄付者にも、該当者は居らず・・・理事達にも聞いてみましたが、思い当たる人おらずでした。

 

自治体職員の方から聞いた「愛犬の名前がマリちゃん」というこの名前だけになんとなく、聞き覚えが…過去の職員に連絡を取り、話す中で、かすかな記憶がよみがえりました。ふと、過去の資料請求等のメモ書きをあても無くパラパラと手にとって見てみると、小さなメモの切れ端がハラリと落ちました。。。そこに書いてあったのが、その方の名前と「愛犬マリ」の文字。資料請求をして下さった際のメモ書きでした。住所もその通りで、ご本人である事が判明しました。記憶の中に残っていたのは、当時、「愛犬マリ」ちゃんを亡くされて、とても悲しんでおられた話を、何度か受けた記憶でした。

その後、自治体に出向いて、打ち合せをする中で、その方はご主人を亡くされた後、お子様もおられずに愛犬マリちゃんと暮しておられたこと。愛犬マリを亡くされ、とてもお気を落とされていたという事。その後、公正証書遺言書をキチンと残しておられ、所有の土地は自治体に(「地域の高齢者の憩いの場」に提供)、そして預貯金の全てを当会にご指定して下さっていた事が判明しました。打ち合せ時に、金額を見て、その金額の大きさに涙が溢れました。4900万円のご遺贈でした。。。関係者一同、大きなパワーを頂き、「マリプロジェクト」として遺志を活かしていくことを誓いました。。。。。

 
最後の「思い」を実現するために行動された方々のエピソードは、この3つにとどまりません。ひとつひとつにそれぞれのストーリーがあります。皆さんがどのように遺贈寄付を決められたのかについての多くの事例は、日本で初の遺贈寄付ストーリー本、「遺贈寄付-最期のお金の活かし方」(立教大学社会デザイン研究所研究員 星野哲著)でご覧頂けます。是非お手に取ってご覧ください。
 

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