2017年度税制改正大綱における、みなし譲渡課税関係の改正についての解説

2016年12月8日に、2017年度税制改正大綱が発表されましたが、その中でみなし譲渡課税関係の改正がありました。

一定の要件を満たしている不動産等の寄付の場合に、通常2~3年かかると言われているみなし譲渡非課税の特例(租税特別措置法40条)の承認手続きを、1か月に短縮するという、承認手続きが緩和された、ということです。

ですので、40条の要件が緩和されたわけではありません。また、今回の要件を満たしていない場合でも、40条の適用を受けられないというわけでもありません(承認に係る特例が受けられないというだけ)

●第二 平成29年度税制改正の具体的内容 (P34~35)

「公益法人等に対して財産を寄付した場合の譲渡所得等の非課税の適用に係る申請書の提出があった日から1月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかった場合にその承認があったものとみなす特例(以下「承認に係る特例」という)について、次の措置を講ずる

①承認に係る特例の対象範囲に次に掲げる贈与又は遺贈(以下「贈与等」という)を加える

(イ)公益社団法人又は公益財団法人に対する贈与等で当該公益社団法人又は公益財団法人の理事、監事、評議員その他これらに準ずるもの(その親族等を含む。以下「役員等」という)以外の者からの者のうち、その贈与等に係る財産が当該公益社団法人又は公益財団法人の公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産とされるもの

(ロ)私立大学等を設置する学校法人以外の学校法人に対する贈与等で当該学校法人の役員等以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該学校法人の基本金に組み入れられるもの

(ハ)社会福祉法人に対する贈与等で当該社会福祉法人の役員等以外の者からのもののうち、その贈与等に係る財産が当該社会法人の基本金に組み入れられるもの

②承認に係る特例の対象資産から株式、新株予約権、特定受益証券発行信託の受益権及び社債的受益権等を除外する

<解説>

もともと、私立学校法人には特例としてあった制度です。

 http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/shinkou/07021403/003/004/001.htm

 役員やその親族でもない者が、公益社団・財団法人や社会福祉法人等に不動産等を寄付する場合で、租税特別措置法40条の非課税規定を受けようとするときに、申請書提出から1月以内に通知がなければ承認があったものとみなす、というものです。

 40条適用には、承認が下りるには通常2~3年かかると言われますが、役員の親族等以外が公益社団・財団法人や社会福祉法人、学校法人に不動産等を寄付する場合には、1か月で承認されるということですので、一定の効果があるかと思います。

ただし、この特例を受けられるのは、かなり限定されています。

①株式等が除かれています。

 株式等をこの特例対象から除いたのは、上場会社の創業者等が財団法人を作って株式を寄付するというスキームには(仮にその財団法人に寄付者が役員等として絡まなくても)この特例は認めない(しっかり審査する)ということなのでしょうか。

②公益社団・財団法人への寄付は、不可欠特定財産の寄付だけです。

 公益社団法人、公益財団法人については、「その贈与等に係る財産が当該公益社団法人又は公益財団法人の公益目的事業を行うために不可欠な特定の財産とされるもの」とされています。

 不可欠特定財産というのは、例えば美術館における美術品のように、特定の公益目的事業と不可分な財産であり、他の事業に転用することができない性質を有しなければいけないものとされていますので、この特例が使える寄付はかなり限定されているようです。
 

 改正の背景は、下記の改正要望を見るとよくわかります。

 http://www.soumu.go.jp/main_content/000437093.pdf

 また、公益法人協会のHPでも紹介されています。

 http://www.kohokyo.or.jp/kohokyo-weblog/non-profit/2016/12/29.html

 
以上となります。

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